研究成果03

口頭発表

口頭発表2008年(平成20年)

1.

N-ethyl-N-nitrosourea 誘発ラット脳腫瘍の免疫組織学的検索

馬場也須子、渋谷一元、大嶋篤、兼田直人、中村圭吾、布谷鉄夫
日本生物科学研究所
第 24 回日本毒性病理学会、 2008 年
要旨:【目的・背景】 N-ethyl-N-nitrosourea ( ENU )誘発ラット脳腫瘍について、これまでに多くの免疫組織学的検索がなされてきたが腫瘍病変とタンパク発現をパネル化した報告は少ない。今回、我々は ENU 誘発ラット脳腫瘍モデルを用いて免疫組織学的検索を実施し各病変における関連タンパクの発現差異について検討を行った。 【材料・方法】 妊娠 20 日の F344/DuCrj ラットに ENU10.0 mg/kg を尾静脈より投与した。 30 週齢の児ラットを剖検後、星状膠細胞腫、乏突起膠細胞腫、星状膠細胞微小腫瘍、乏突起膠細胞微小腫瘍と診断された病理組織標本について免疫組織学的検索を実施した。検索には中間径フィラメント( Vimentin, Neurofilament, α-Internexin, Nestin, GFAP )、神経( S-100, NSE, Synaptophysin )、細胞増殖( PCNA, Ki-67 )、糖輸送担体( GLUT1, 3, 5 )、水チャネル( AQP 1 )関連マーカーを用いた。 【結果】 星状膠細胞腫では一部の腫瘍細胞で Nestin が陽性、一部の間質で α-Internexin が陽性、一部の血管内皮細胞で AQP 1 が弱陽性を示したのに対し、他の腫瘍では陰性であった。また全ての腫瘍において GLUT1 は血管内皮細胞、 GLUT3 および 5 は一部の腫瘍細胞で陽性であった。その他のマーカーについては既報とほぼ同様の結果が得られた。 【考察】 ENU 誘発脳腫瘍では星状膠細胞腫は神経幹細胞マーカーである Nestin 、神経分化初期マーカーである α-Internexin が陽性を示した。 Nestin はヒトでは PNET 、膠芽腫、上衣腫および星状膠細胞腫などで、ラットでは悪性膠腫瘍で陽性になることが知られている。今回の検索で微小腫瘍では Nestin が陰性となることから、異型度の高い星状膠細胞腫の発生には Nestin の発現が関連している可能性が示唆された。ラットでは AQP 1 が星状膠細胞腫で弱陽性であり、ヒトと同様に脳浮腫発生に AQP 1 が関与していることが考えられた。 GLUT 分子ではヒトの脳腫瘍とほぼ同様の発現が認められ、糖の取り込み能が腫瘍巣内で活性化していることが示唆された。

2.

Streptozotocin ( STZ ) 投与後の胎子膵島 B 細胞の新生に関する研究

大嶋篤 1),2)、山本雅子2)、有嶋和義2)
1) 日生研、2) 麻布大
第 145 回日本獣医学会学術集会、 2008 年
要旨:【背景・目的】 実験的に糖尿病を誘発する Streptozotocin ( STZ ) をラットに投与すると、膵島 B 細胞が破壊される。その後膵島 B 細胞は新生するが、 insulin 分泌能は有していない。ラット胎子でも STZ を直接投与後、膵島 B 細胞は再生される
( Yamamoto et al ., 2004 ) が、 STZ 投与後の膵島 B 細胞の新生に関わる因子は明らかになっていない。そこで、本実験は膵島 B 細胞の分化に関する因子と STZ 投与後に新生した B 細胞の関連について検討した。 【材料・方法】 動物は Wistar rat を用いた。妊娠 19 日目の午前 10 時に、 STZ 200 μ g/g ( 胎子体重 ) を胎子背部皮下に直接投与した ( STZ 群 ) 。 同腹の胎子に生理食塩水のみを投与した偽投与群 ( Sham 群 ) と、無処置群 ( Control 群 ) を設定した。剖検は投与開始時 ( 0 時間 ) 、 6 、 12 、 24 および 48 時間後に行い、胎子膵臓および血液を採取した。膵臓を用いて、 ngn3 , nkx2.2 , nkx6.1 , pax4 および proinsulin の mRNA 発現量を半定量的 RT ‐ PCR によって測定した。また血液を用いて血漿 insulin および glucose 濃度を測定した。 【結果・考察】 STZ 群の血漿中 glucose 濃度は Control 群と比べて増加せず、 STZ を投与された胎子は高血糖にならないことが証明された。血漿中 insulin 濃度と proinsulin の発現量は相関しており、投与 48 時間後には膵島 B 細胞の増加および機能的な分化が完成していることが示唆された。 nkx6.1 の発現量は投与 24 時間後の STZ 群の値が他の 2 群の値と比べて有意に増加した。 pax4 の発現量は投与 6 および 12 時間後の STZ 群の値が Control 群の値と比べて有意に増加した。この二つの因子の発現の順から、破壊された膵島 B 細胞は通常の発生と同様に新生され、また、膵島 B 細胞の新生にはこれらの因子が重要であると示唆された。

3.

ラットの腹腔内腫瘤

長谷川也須子
日本生物科学研究所
第 48 回獣医病理学研修会、 2008 年
要旨:【動物】 ラット (F344/DuCrj) 、 雌、 90 週齢 。 【臨床事項】 本例はがん原性試験の無処置対照群に供されていた動物で、 90 週齢時に死亡、剖検された 。 【肉眼所見】 剖検時体重 185 g 。 全身の被毛は粗剛。腹腔内に 60 x 25 x 35 mm 大の暗赤色腫瘤として認められた 。 腫瘤は右側背部の腹壁に存在し 、 一部横隔膜を貫通して胸腔内に突出していた 。 腫瘤と腹腔内臓器との癒着あるいは腫瘤が腹腔内臓器を巻き込むことはなかった 。 腫瘤の割面は分葉状充実性で 、 大小の嚢胞形成を伴っていた 。 その他 、 脾腫 、 肺のうっ血 、 腎臓の緑色調化が観察された以外 、 特記すべき肉眼所見はなかった 。 【組織所見】 腫瘍組織内には血液を充満した大小の類洞様空隙 、 出血巣 、 壊死巣が観察され 、 一部では血栓形成も認められた 。 また類骨組織の形成が散見され 、 一部では石灰の沈着を伴っていた 。 腫瘍組織には異型度の高い類円形~紡錘形の腫瘍細胞がび慢性に増殖し 、 一部では破骨細胞様の多核巨細胞が観察された 。 腫瘍細胞はアザン染色に赤 、 渡辺鍍銀染色で個々の細胞に区画されていた 。 また PAS 反応では一部の多核巨細胞が陽性を示し 、 コッサ染色で類骨は黒色を呈し石灰の沈着が確認された 。 免疫組織学的検索では Vimentin および Osteopontin に対し腫瘍細胞および多核巨細胞が共に陽性 、 Collagen type I, Osteocalcin では一部の腫瘍細胞、類骨が陽性を示した 。 PCNA では腫瘍細胞のみが陽性を示し 、 多核巨細胞は陰性であった 。 ED1 では多核巨細胞のみが陽性であった 。 また一部の類骨で Bone sialoprotein が弱陽性を示した 。 電顕検索では腫瘍細胞の核に不規則な切り込みがみられ 、 細胞質内には一部拡張した粗面小胞体と少数の細胞内小器官が認められた 。 多核巨細胞には豊富な小型のミトコンドリアがみられた 。 細胞外基質には少量のコラーゲンと共に無機質の沈着が確認された 。 【診断】 老齢ラットの腹腔内にみられた自然発生性骨外性骨肉腫。 【考察】 病理組織学的検索結果より 、 腫瘍細胞では Collagen type I 、 Osteocalcin 、 Osteopontin タンパクの発現が確認され骨芽細胞に類似した性質を有していることが明らかとなった 。 一方、多核巨細胞は 、 その形態的特徴と Osteopontin, ED1 タンパクの発現より破骨細胞に類似した細胞であると考えられた 。 ラットの骨肉腫は主に骨形成型 、 線維芽細胞型 、 骨芽細胞型および血管拡張型に分類される 。 本症例は腫瘍巣内に血液を充満した多数の拡張した類洞様組織が観察され 、 類骨形成を伴った骨芽細胞様腫瘍細胞の増殖がみられたことより血管拡張型とした 。 ラットの骨外性骨肉種の報告は非常に少なく 、 心嚢 、 横隔膜 、 腹部皮下組織での報告が数例あるのみである 。 いずれの報告例でも類骨形成を伴った骨芽細胞様腫瘍細胞の増殖を特徴としている 。 本症例は右側背部の腹壁で腫瘤が認められたものの 。 脊椎骨など周囲骨組織との連続性は観察されなかったため骨外性骨肉腫とした 。

4.

HSV-1感染細胞の形態制御機構

佐合健 1),2)
1) 日本生物科学研究所
2) 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター感染制御部門ウイルス学分野
第56回日本ウイルス学会学術集会、2008年
要旨[背景と目的]ウイルス感染の制御法として、ウイルス特異酵素は重要なターゲットである。HSV-1はゲノムに複数のprotein kinaseをコードしている。今回、我々はprotein kinaseのひとつであるUs3に着目し、in vitroにおける自己リン酸化部位特異的モノクローナル抗体を用いて感染細胞内での生物学的意義を解析した。
【材料と方法】野生体であるHSV-1(F)、自己リン酸化部位の変異体とその復帰体を用いた。感染させる細胞としてVero細胞を用い、またin vitroでの自己リン酸化部位特異的モノクローナル抗体を作製し、解析を行った。[結果と考察]感染細胞においても、Us3のin vitroでの自己リン酸化部位は自己リン酸化されることが示唆され、かつそれは感染初期に起こることが明らかとなった。さらに、自己リン酸化部位の変異体では感染細胞形態が顕著に異なることから、Us3の感染細胞での自己リン酸化は感染初期に起こる細胞形態の制御に重要であることが示唆された。

5.

リアルタイムイメージングを利用した HSV-1特異酵素の新規機能解明の試み

佐合健 1),2)
1) 日本生物科学研究所
2) 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター感染制御部門ウイルス学分野
第56回日本ウイルス学会学術集会、2008年
要旨[背景と目的] ウイルス感染の制御法として、ウイルス特異酵素は重要なターゲットである。 HSV-1 はそのゲノムに複数の核酸切断酵素をコードしており、その感染細胞、生体での重要性がこれまでに報告されている。今回我々は、核酸切断酵素 (Vhs, UL12) の新規機能を解明するため、それぞれの蛋白に蛍光蛋白を融合させた組換えウイルスを作製し、解析を行った。 [材料と方法] 野生体から精製したウイルスゲノムと transfer plasmid を哺乳類細胞に共導入し、細胞内で相同組み換えを起こさせた。目的の組み換えウイルスは、プラッククローニングにより単離した。感染させる細胞として Vero 細胞を用いた。 [結果と考察] 蛍光ウイルスを用いた解析により、 Vhs はシャペロン蛋白である Hsc70 と感染細胞において核内で共局在することが明らかとなった。 Vhs とシャペロンとの相互作用や、ビリオンへのシャペロンの取り込みに関与する可能性がある。また、 UL12 は感染細胞において核小体に局在することがわかり、さらに核小体の主要蛋白である Nucleolin と相互作用することも明らかとなった。 Nucleolin がシャトル蛋白であるという報告からも、ウイルスの Nuclear egress に関わる相互作用である可能性がある。以上のように、新しいアプローチにより各ウイルス因子の新規機能が解明できることが示唆された。

6.

NS1-DIVAシステムを用いた国内製造鳥インフルエンザワクチン注射鶏のモニタリング

竹山夏実 1)、三成健二 2)、坂元隆一 3)、佐々木崇 4)、瀧川義康 5)、真瀬昌司 6)
土屋耕太郎 1)、岡松正敏 2)、塚本健司 6)、林志鋒 1) 、迫田義博 2) 、喜田宏 2)
1) 日本生物科学研究所
2) 北海道大学大学院獣医学研究科
3) 化学及血清療法研究所
4) 微生物化学研究所
5) 北里研究所
6) 動物衛生研究所
第 146 回日本獣医学会学術集会、 2008 年
要旨[背景] 平成 18 年に国内開発 AI ワクチンが承認されたが、もし仮にワクチンを使用しなければならない場合、ワクチン注射鶏と野外 AI ウイルス (AIV) 感染鶏を識別しなければならない。我々は野外 AIV の NA 亜型に影響されない DIVA システムとして、 AIV 非構造タンパク質 NS1 に対する ELISA 抗体測定による DIVA システム( NS1-DIVA システム)の有用性を検討した。 [材料と方法] 初生ヒナに H5 亜型あるいは H7 亜型ワクチンを注射し、経時的に攻撃試験に供した鶏の血清を用い、抗 NS1 抗体を測定した。攻撃ウイルスには山口 (H5N1) 株または Ty/Italy (H7N1) 株を用いた。 ELISA 抗原には、大腸菌発現 NS1 を用いた。抗体レベルは E 値で表し、正常鶏血清の E 値の分布を元にカットオフ値を 0.3 とした。 [結果および考察] H5 及び H7 ワクチン注射群の攻撃前の経時血清で E 値がカットオフ値を超えるものは極めて少なく、国内製造 AI ワクチンの注射は NS1-DIVA システムの成立を阻害する NS1 抗体の産生は少なかった。ワクチン注射後攻撃までの期間が長くなると、抗 NS1 抗体上昇個体の割合が増加したが、追加免疫により抗体上昇個体の割合は抑制された。攻撃後の抗 NS1 抗体上昇個体の割合は、 HI 抗体価のレベルと逆相関し、攻撃により死亡あるいはウイルスを排泄する個体の割合と相関した。以上の結果は、 NS1-DIVA システムが、国内製造ワクチン使用時の野外 AIV 感染のモニタリングに有用であることを示す。

7.

鳥インフルエンザの診断における NS1-DIVAシステム

竹山夏実、土屋耕太郎
日本生物科学研究所

家畜衛生フォーラム 2008 (東京) 
要旨2007 年には国内開発 H5 および H7 亜型鳥インフルエンザワクチンが製造販売承認され、国内備蓄用ワクチン候補の一つとされた。鳥インフルエンザワクチン接種が実施される場合、ワクチン接種後の清浄性確認のためにワクチン抗体と野外株感染抗体を識別できるモニタリングシステムが必須である。このような背景から、鳥インフルエンザワクチン接種後の野外ウイルス感染をモニタリングするシステムの構築が必須となる。抗体検出によりワクチン注射を受けた動物と野外ウイルス感染動物を区別し、野外ウイルスの侵入を摘発する differentiating infected from vaccinated animals (DIVA) システムとして、我々はウイルス感染細胞の中で産生される非構造タンパク質( NS1 )に対する抗体を検出する NS1-DIVA システムを確立した。本システムは 野外ウイルスの侵入を早期に検出し、不顕性感染の拡大を防ぐ有効な手段であると考えられる

8.

リアルタイム PCR法によるエリシペロトリックス属菌の検出・鑑別と定量

To Ho、小山智洋、長井伸也、土屋耕太郎、布谷鉄夫
日本生物科学研究所
第 146 回日本獣医学会学術集会、 2008 年

要旨[緒言] 豚丹毒の診断は、通常、臨床所見と培養による豚丹毒菌( Erysipelothrix rhusiopathiae ; 以下 Er )の検出によって行われているが、本菌の分離から血清型の同定までには日数を要する。 PCR 法は有用な方法ではあるが、その操作は繁雑である。今回、我々は Er および Erysipelothrix tonsillarum (以下 Et )の鑑別及び迅速かつ簡便な検出を目的として、リアルタイム PCR 法の応用を試みた。 [方法] Er 及び Et を対象とし、 16S rRNA 遺伝子および 莢 膜の形成に関与する遺伝子領域内の特異的な配列を基にプライマーを設計した。 PCR 反応とリアルタイム蛍光検出は、ライトサイクラー及び SYBER Green 法( Roche Diagnostics 社製 ) を用いて実施した。 [結果] 標準試料を用いた測定において、横軸に菌数(常用対数)を、縦軸にサイクル数( Ct 値)を取ると、測定値は一次直線の関係を示し、用量反応関係が認められた。増幅産物の融解曲線分析では、種ごとに単一ピークと固有の Tm 値を示した。 Er に実験感染したマウスおよび豚から採取した材料について本法を応用したところ、すべての検体から定量的に Er の検出が可能であった。さらに、慢性型豚丹毒の罹患が疑われた野外飼養豚からの Er の検出および Et との鑑別が可能であった。 [考察] 本法を応用することによって、簡便かつ迅速に、エリシペロトリックス属菌の種特異的な検出と定量が可能であることが判明した。

9.

ケージ内飼育鶏におけるコクシジウム生ワクチン点眼投与の応用

川原史也
第 146 回日本獣医学会学術集会、 2008 年
要旨[緒言] ケージ内飼育される採卵鶏においては、多くの場合 10 週齢まで抗コクシジウム予防剤を飼料添加しているが、それ以外での直接的な予防法はなく、コクシジウム生ワクチンを用いた対策法の確立が望まれている。そこで、本研究ではケージ内飼育鶏における生ワクチンの応用を検討した。 [方法] SPF 鶏群由来ひなをワイヤー製のケージ内に収容し、市販鶏コクシジウム弱毒 3 価生ワクチンを 1 回当たり 0.02 m L ( 1dose 相当量)点眼投与した。試験 1 (免疫原性確認試験)では、 6 日齢のひなを 2 回( 10 日間隔)免疫群、 1 回免疫群、非免疫群および非攻撃群に分け、初回免疫 3 週後に 1 羽当たり 1 ~ 4×10 5 個の Eimeria acervulina 、 E. maxima および E. tenella 強毒株オーシストをそれぞれ経口投与して攻撃した。試験 2 (免疫持続確認試験)では、 3 週齢のひなを 2 回( 10 日間隔)免疫群、非免疫群および非攻撃群に分け、初回免疫 3 週後、 7 週後および 13 週後に 1 羽当たり 1×10 5 個の E. tenella 強毒株オーシストを経口投与して攻撃した。 [結果] 試験 1 において、免疫群は攻撃後の臨床症状発現の軽減および増体率の改善が認められ、特に 2 回免疫群においてその効果は顕著であった。試験 2 では全ての攻撃時期で、攻撃後の死亡率、増体率および盲腸病変スコアは免疫群が常に良好な成績であった。しかしながら、免疫後の経過が長いほどその効果は減弱する傾向を示した。 [考察] ケージ内飼育鶏においても、本ワクチンの投与により良好な免疫を付与できることが示唆されたが、その状態を長期間維持するためには追加免疫が必要と考えられた。

10.

組換えイヌ顆粒球コロニー刺激因子によるサイクロフォスファミドによって誘導した好中球減少症の改善

山元哲、岩田晃
日本生物科学研究所

第 146 回日本獣医学会学術集会、 2008 年
要旨[目的] 顆粒球コロニー刺激因子( G-CSF )は好中球の分化増殖、末梢血中への動員活性を持つサイトカインであり、癌の化学療法、放射線療法時の好中球減少症を改善する治療薬として人医療では実用化されている。我々は第 137 回本学会において、組換えイヌ G-CSF のブレビバチラスによる発現及び精製について報告した。今回、精製標品を用いてサイクロフォスファミド( CY )によって誘導した好中球減少症の改善を試みた。 [方法] 試験には健常ビーグル犬 6 頭(約 10kg )を用いた。精製組換えイヌ G-CSF は電気泳動で単一バンドであり、エンドトキシンが 20EU/100μg protein 以下の標品を用いた。好中球減少症は 400mg/mm 2 の CY を静脈内に単回投与し誘導した。末梢血の有核細胞数及びフローサイトメータで顆粒球数を毎日測定した。好中球減少症は顆粒球数 1000/mm 3 以下もしくは 2000/mm 3 以下で 39.5 ℃ 以上の体温が認められるときとした。 [結果好中球減少症時に G-CSF を投与すると、 2.5μg/kg 以上投与した場合に約 1.5 日の回復の促進が見られた。ただし、投与回数、顆粒球数 2000/mm 3 以下の期間には有意差が見られなかった。 CY 投与後、 1 ~ 3 日後に 2.5μg/kg の G-CSF を投与する予防的治療を試みた。 CY 投与後 1 日目に投与した場合は顆粒球数の回復にはそれほど差が見られなかったが、 G-CSF の投与回数が増加した。 CY 投与後 2 ないし 3 日後に G-CSF の投与を開始した場合は回復に要した日数及び顆粒球数 2000/mm 3 以下の期間が有意に減少した。 [総括] 投与 G-CSF 量は 2.5μg/kg 以上必要であり、 CY 投与後 2 日以降に開始する予防的投与のほうが改善効果は高いと考えられた。

11.

組換えイヌ顆粒球コロニー刺激因子投与による好中球減少症の改善

岩田晃、山元哲
日本生物科学研究所

第 6 回動物サイトカイン研究会学術集会、 2008 年
要旨顆粒球コロニー刺激因子( G-CSF )は好中球の分化増殖、末梢血中への動員活性を持つサイトカインであり、人医療では医薬品として実用化されている。効能・効果は癌の化学療法、放射線療法時の好中球減少症の改善、造血幹細胞の末梢血への誘導、造血幹細胞移植時の好中球数の回復促進、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、 HIV 感染の治療に伴う好中球減少症の改善など多岐にわたる。最近では心筋細胞、神経細胞の再生の促進などの効果も報告され、適用例も拡大しそうである。我々は本研究会の設立記念シンポジウムにおいて、大腸菌で発現した組換えネコ G-CSF の効果について報告した。残念ながら、本標品は安定性に問題があったが、組換えイヌ G-CSF をブレビバチラスにより発現し、精製することでより安定な標品を供給することができた。今回、精製標品を用いてサイクロフォスファミド( CY )によって誘導した好中球減少症の改善を試みたのでその結果を紹介する。好中球減少症は健常ビーグル犬(約 10kg )に 400mg/m 2 の CY を静脈内に単回投与し誘導した。好中球減少症は顆粒球数 1000/mm 3 以下もしくは 2000/mm 3 以下で 39.5℃ 以上の体温が認められるときとした。好中球減少症時に G-CSF を投与した場合、回復の促進は 2.5μg/kg 以上投与した群で見られたが、 1.5 日程度の促進にとどまった。好中球減少症を予防するために、 CY 投与後、 1 ~ 3 日後に 2.5μg/kg の G-CSF を投与した。 CY 投与後 1 日目に投与した場合は好中球数の回復にはそれほど差が見られず、かえって好中球減少症が悪化し、 G-CSF の投与回数が増加した。 CY 投与後 2 ないし 3 日後に G-CSF の投与を開始した場合は回復に要した日数及び好中球数 2000/mm 3 以下の期間が有意に減少した。投与 G-CSF 量は 2.5μg/kg 以上必要であり、 CY 投与後 2 日以降に開始する予防的投与のほうが改善効果が高いと考えられた。CY投与後、 2-3 日後に一過性の顆粒数の増加が見られることもあり、G-CSF投与のタイミングが問題である。現在のところ、好中球数を血中で一定に保つ制御システムにはG-CSFが中心的な役割を果たすことは予想されているが、G-CSF生産の制御についての知見は乏しい。抗がん剤投与による骨髄細胞数の変化、骨髄細胞の血中への動員、及び好中球数の制御について、最近の知見を交えて考察する。

12.

The analysis of chicken lactate dehydrogenase-A promoter region

Katsumata, A., Yamamoto, A. and Iwata, A.
Nippon Institute for Biological Science
The 31 st Annual Meeting of the Molecular Biology Society of Japan , 2008 ( Kobe )

ABSTRACT:The chicken lactate dehydrogenase A (LDH-A) subunit gene has two promoters. The distal promoter expanding from +29 to -232 upstream from the transcription initiation site has the feature of a typical TATA-less house-keeping gene promoter. This region has high GC-content (75.8%) and DNA motifs such as five SP1, one AP2, and one CRE binding sites. In addition, there was a negative element between -233 and -282. Meanwhile, the proximal promoter was found within the first intron, where there was no feature of the Pol II promoter, produced two types of RNA; one was polyadenylated and the synthesis of it was sensitive to a-amanitin, but the other was not polyadenylated and the synthesis of it was insensitive to 2 μg/ml α-amanitin in vitro. Transcription of the proximal promoter was high in cardiac muscle of adult chickens where the LDH-A gene is weakly transcribed, but was low in skeletal muscle and particularly in embryo where the LDH-A gene is strongly transcribed. Taken all the results together we propose that the proximal promoter may play a role in the regulation of LDH-A in tissue specific and/or developmental stage specific LDH-A gene expression.

13.

Effects of 50 Hz Circulary Polarized Magnetic Fields on 1-propyl-1-nitrosourea Induced Neoplasm in FEMALE Donryu Rats (1) Hematopoietic Neoplasms

Negishi, T .1), Shibuya, K .2), Imai, S .2) and Nishimura, I .1)
1) Central Research Institute of Electric Power Industry
2) Nippon Institute for Biological Science

5 th International Workshop on Biological Effects of Electromagnetic Fields , 2008 ( Terrasini , Italy )
ABSTRACT:A total of 300 female Donryu rats at 11 weeks of age were randomly divided into five groups of 60 rats. Animals were given 300 mg/kg body weight of 1-propyl-1-nitrosourea (PNU) by oral administration, 5 days a week for 5 weeks. After PNU administration, the other four groups were exposed to either 0 (sham-exposure), 7, 70 or 350 μT(rms) circularly polarized 50 Hz magnetic fields (MFs), 22 hrs/day, 7 days/week for 30 weeks. Hematopoietic neoplasms were myelogenous leukemia, erythrocytic leukemia, histiocytic sarcoma and malignant lymphoma/leukemia. The cumulative proportions of rats with each hematopoietic neoplasm in MF-exposure groups were not significantly higher than those in the sham-exposure group with a log-rank test . T he cumulative proportions of rats with myelogenous leukemia and erythrocytic leukemia combined, and rats with four types of hematopoietic neoplasm combined in MF-exposure groups were not significantly higher than those in the sham-exposure group. These data do not support that continuous circularly polarized 50 Hz MFs of up to 350 μT promote chemically induced hematopoietic neoplasms in rats.

14.

Effects of 50 Hz Circularly Polarized Magnetic Fields on 1-propyl-1-nitrosourea Induced Neoplasms in Female Donryu Rats (2) Major Neoplasms Except for Hematopoietic Neoplasms

Shibuya, K.1), Negishi, T.2), Ima,i S.1) and Nishimura, I.2)
1) Nippon Institute for Biological Science
2) Central Research Institute of Electric Power Industry

5 th International Workshop on Biological Effects of Electromagnetic Fields , 2008 ( Terrasini , Italy )
ABSTRACT:To investigate a possible effect of 50 Hz magnetic fields (MFs) as a promoter of hematopoietic neoplasms, a total of 300 female Donryu rats initiated by oral administration of 1-propyl-1-nitrosourea (PNU) were divided into five groups consisting of 60 rats. The four groups were exposed to either 0 (sham-exposure), 7, 70 or 300 μT (mrs) circularly polarized 50 Hz MFs, 22 hrs/day, 7 days/week for 30 weeks. The major neoplasms excepting hemaopoitic tumors were squamous cell carcinoma and squamous cell papilloma in the forestomach, hemangioma in the spleen, liver and uterus, hepatocellular adenoma in the liver, adenocarcinoma and fibroadenoma in the mammary gland. The incidences of these tumors in three MFs-exposure groups were not statistically different from those in the 0 μT (sham-exposure) group. There was no relationship between numbers of white blood cells and occurrences of leukemia in the rats because severe inflammatory reactions were accompanied with tumors occurred in the stomach or mammary gland. The present results suggest that there is no relationship between circularly polarized 50 Hz MFs-exposure and any neoplasm induction in the PNU-initiated rats.

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