研究成果03

口頭発表

口頭発表2016年(平成28年)

1.

The development of an enlonged bacterial vaccine against Erysipelothrix rhusiopathiae infection

Teshima, K.1), Kamada, T.1), To, H.1),Oshima, A.1), Sasakawa, C.1), Tsutsumi, N.1)
1) Nippon Institute for Biological Science
International Pig Veterinary Society Congress 2016, Dublin, Ireland
Abstract: 【Introduction】Phagocytosis of microbes by monocytes is a crticial factor to enhance vaccine effects. It was previously reported that the bigger size of bacteria resulted in higher probability of phagocytosis compared with the normal ones. For instance, S.pneumoniae with longer chains were easily uptaken in vitro due to the deposition of complements. However, it is not well proved whether the uptake of the bigger size of bacteria induces acquired immunity in vivo and enhances vaccine effects. Here, we proposed the system to elongate the bacteria, E.rhusiopathiae (ER), and applied this system to examine the vaccine effects of elongated bacteria by in vivo administration. Our results indicate that elongation of bacteria is required for enhancing the vaccine effect but not sufficient.【Materials and Methods】 ER was grown with cephalexin, inactivated by formalin, and supplemented with micro emulsion as adjuvant. Mice were immunized subcutaneously with the vaccines. For the detection of anti-SpaA (a photogenic factor of ER) antibodies by ELISA, blood samples were collected. After the immunization, the mice were challenged with ER. 【Results】 In 3 h incubation with cephalexin, the length and number of elongated bacteria was 3 and 0.1 times larger than those of the non-treated bacteria, respectively. When they were administrated to mice, the survival rate in a group of mice vaccinated with elongated bacteria (A), non-treated bacteria (B) and sole cephalexin mixed with non-treated bacteria (C) are 80%, 20% and 10%, respectively. Titer of anti-SpaA antibody in group A showed more than twice larger than that of group B and C. These results indicated that vaccination with elongated bacteria potentiate to induce stronger protective immunity against ER infection than that with control bacteria. To examine the vaccine effects of components within elongated bacteria, bacteria after incubation with or without cephalexin were collected. When bacteria vaccine without supernatants were administrated to mice, there was no difference in both the survival rate and titer of anti-SpaA antibody between group A and B. These results suggest that not only intra-cellular components within elongated bacteria but also the secretion suspended in the supernatants contributes to the enhancement of vaccine effects. 【Conclusion】 Vaccination with elongated bacteria including the supernatants induces higher immunological response than one with non-treated bacteria, resulting in protection of ER infection. This effect does not arise from the cell components located inside the cells, rather indicating that elongation of bacteria by cephalexin induces the secretion of some yetuncharacterized bacterial components to enhance vaccine effects.

2.

生ワクチンを利用した豚流行性下痢対策の現状と今後の展望

佐藤哲朗
一般財団法人日本生物科学研究所
第26回日本SPF豚研究会、2016年
要旨:現在、国内で利用されているPED生ワクチンは、免疫された母豚の乳汁中に中和抗体を分泌し、それを摂取する子豚の消化管内でPEDVが中和される機序の元に設計された。哺乳豚が高度な中和抗体の含まれる乳汁を哺乳期間中に摂取し続けることによって、ウイルスは中和され、本ワクチンの効能であるPEDの症状軽減が得られる。

3.

食鳥処理場での大腸菌症廃棄における血清型とその割合

魚谷勇介1)、今井孝彦1)、北原梨恵1)、永野哲司1)、堤信幸1)
1) 一般財団法人日本生物科学研究所
平成28年度日本獣医学会学術集会、2016年
要旨:【背景】 鶏大腸菌症の発生は肉用鶏において日常的に認められ、育成率の低下及び増体重の減少による生産成績の悪化や、食鳥検査における廃棄の増加など、経済性に大きな影響を与えている。今回、我々は2015年2月から8月にかけて3箇所の食鳥処理場において、大腸菌症による廃棄鶏から臓器を採材し、大腸菌の分離と血清型別を行ったのでその概要を報告する。 【材料と方法】 食鳥処理場において大腸菌症として全部および一部廃棄された鶏の心臓、肝臓、肺、皮膚のいずれか、または複数を病変により選択し、10農場から出荷された鶏計231羽から518臓器を採材した。採材した臓器は選択培地に直接塗抹し、分離された大腸菌について定法に従いO抗原血清型別を行った。同一検体の複数臓器から同じ血清型が分離された場合は重複を避け、農場毎に分離された血清型の統計処理を行った。 【結果】 多くの検体から大腸菌が分離された5農場において、同定された最も多い血清型とその割合はそれぞれO20(12%)、O2(20%)、O2(35%)O1とO8(11%)、O2(21%)であった。血清型の分布は農場によって異なり、複数の農場において特定の血清型の分離率が高い傾向にあった。また、全ての農場において血清型が同定出来ない大腸菌が多数存在した。 【総括】 出荷された農場における大腸菌の浸潤状況によって廃棄率や大腸菌の分離率は異なり、また、廃棄数が同程度でも血清型の分布は農場によって異なっていた。同一の血清型が多く分布する農場、様々な血清型が分布する農場が存在しており、農場に浸潤する大腸菌の病原性の違いが関与している可能性が考えられる。

4.

MucoRice-CTBを応用した豚大腸菌下痢症の経口ワクチン

竹山夏実
一般財団法人日本生物科学研究所
第160委員会第3回研究会「実用化を目指した植物による有用タンパク質生産技術」、2016年
要旨: 毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli: ETEC) は、ヒトおよび畜産動物において細菌性下痢症を引き起こす原因菌である。畜産動物でのETEC発生は経済的な損失に繋がるため無視できない疾病の1つと言える。豚でのETEC発症による致死率は高くはないものの、哺乳期や離乳期の仔豚においてコクシジウムやロタウイルスとの複合感染により下痢症状が増悪することもある。そのため、農場の衛生管理ならびにワクチン接種プログラムにより腸管感染症のリスクを下げることが必要となる。ETECは哺乳期および離乳期にかけての発症リスクが高い。また、ETECは非侵襲性細菌であり、腸管粘膜上(腸管腔内)で増殖することから、哺乳中の仔豚には、母豚からのミルクを介した受動免疫により分泌型IgA (Secretory IgA: SIgA)が供給されることが望ましい。抗原特異的SIgAを誘導するには、不活化抗原の筋肉内投与では十分でないため、粘膜ワクチンが候補となる。 豚に感染するETECは線毛タイプで5種類が知られているが、下痢症の原因の1つとなる易熱性毒素(heat labile enterotoxin: LT)は線毛タイプでの相違性がほとんどないため、ETEC下痢症のワクチン抗原としてLTをターゲットとした。これまでに、東京大学医科学研究所、幸・清野らのグループがヒトのコレラおよび旅行者下痢症ワクチンとして、コレラトキシンBサブユニット (CTB)を種子に発現するイネ (MucoRice-CTB)を作出した。遺伝子組換え技術をイネに応用したMucoRice-CTBは、種子の状態で室温保管ができ、また投与に医療機器を必要としないという特徴を有している。マウスやサルを用いた経口免疫で、MucoRice-CTB がCTに対する中和抗体を誘導すること等を確かめてきた。CTBはLTBと高い相同性を持つことから、MucoRice-CTBが大腸菌症の経口ワクチンとして受動免疫および能動免疫を誘導する効果を調べた。2ヶ月齢ミニブタへの4回経口投与することで筋肉内投与法と比較して高い血中CTB特異的IgAの産生を認めた。さらに、移行抗体により新生豚を早発性下痢から防御するワクチネーションプログラムに即して、妊娠豚に妊娠前に3回、分娩後5日で1回MucoRice-CTBの経口免疫を行った。免疫した母豚の初乳および経過2週間の常乳にCTB特異的IgGおよびIgAの分泌が認められ、乳汁抗体はCT毒素に対して中和効果を示した。また、産生された抗体のLTへの交差性も確認された。以上のことから、MucoRice-CTB経口ワクチンによる受動免疫が、豚ETEC下痢の防御に有効である可能性が示され、MucoRiceを畜産へ応用できる可能性が広がった。
5.

核酸分解システムRNoutophagy/DNautophagyによるウイルス増殖抑制

藤原悠紀1)、小祿和希2)、大島義之2)、佐藤哲朗2)、堤信幸2)、和田圭司1)、株田智弘1)
1) 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
2) 一般財団法人日本生物科学研究所
第10回オートファジー研究会 兼 第4回新学術「オートファジー」班会議、2016年
要旨:これまでにわれわれはリソソームがオートファゴソームを介さずに直接、ATP依存的にRNAやDNAを内宮へと取り込み、分解するというシステムを発見し、これらをRNautophagy/DNautophagy (RDAと略記)と名付け報告してきた。これまでの研究結果からRDAにおいてリソソーム膜蛋白質であるLAMP2CおよびSIDT2がそれぞれ核酸受容体および核酸トランスポーターとして機能すると考えられるが、RDAの生理的意義については多くが不明であった。
6.

ワクチンを利用した豚流行性下痢の予防と制御

佐藤哲朗
一般財団法人日本生物科学研究所
シンポジウム「感染症へ挑戦する若手研究者達」、2016年
要旨:豚流行性下痢(PED)は、PEDウイルス(PEDV)の経口感染によって引き起こされるウイルス性感染症である。水様性の下痢を主徴とし、1週齢以下の哺乳豚において、非常に高い致死率を示す。1980年代前半より、国内でのPEDの発生は散発的に報告されていたが、1996年1〜8月には1道8県102戸の農場で発生が記録され、全国的な流行となった。現在、国内で利用されている生ワクチンは、国内分離株を用いて開発され、1996年11月にその製造販売が承認されたものである。従って、2013年後半に始まった全国的なPEDの再興は、本ワクチンにとって、初めて直面する本格的な流行となったと言える。
7.

ニワトリの胸腺

近内将記
一般財団法人日本生物科学研究所
第4回 日本獣医病理学専門家協会学術集会スライドフォーラム、2017年
【動物】ニワトリ、レイヤー、30日齢【臨床事項】1鶏舎当たり2 ~ 4 万羽飼育のある養鶏場で、24日齢頃から元気消失してうずくまり、死亡する鶏が9月初旬頃から徐々に増加した。25日齢から30日齢までの合計死亡率は約0.5%であった。鶏群には14日齢でIBとND、22日齢でIBDのワクチンが接種されていた。提出例は病性鑑定のために当所に搬入された病鶏5羽のうちの1例である。【肉眼所見】腹腔内に凝血塊の貯留、肝臓、腎臓、肺および骨格筋の点状出血、胸腺およびファブリキウス嚢の萎縮などが観察された。【組織所見】胸腺は萎縮し、シスト様構造物の集塊が被膜下、小葉間結合組織、皮髄境界部および胸腺周囲の血管などに観察された。シスト様構造物は直径約 150~200μm で、好酸性均一の包膜と内部に好塩基性顆粒状のメロゾイトを容れた原虫のメガロシゾントで、メロゾイトを放出した空虚のものや血球を容れたものなども観察された。メロゾイト放出後の変性過程にあるメガロシゾントでは、多くのシゾント包膜は変形・萎縮あるいは崩壊し、シゾント包膜内側に対して異物巨細胞反応や偽好酸球およびマクロファージの浸潤とそれらによるメロゾイトの貪食などが観察された。変性が進行したシゾント集塊周囲には、多数の異物巨細胞反応、マクロファージ浸潤および線維芽細胞増生などを特徴とした重度の肉芽腫性炎症が見られ、変性シゾント包膜の部分的消失を伴っていた。また、シゾント包膜が消失したと思われるような壊死を伴う肉芽組織病巣も散見された。炎症反応を伴う同様のメガロシゾント形成は胸腺周囲の脂肪組織や末梢神経・血管近傍の間質および血管内にも観察された。提出標本以外では、肝臓、脾臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋など全身諸臓器・組織に様々な程度のメガロシゾント形成や肉芽腫性炎症が確認された。提出例以外の症例にも同様のメガロシゾントが肺などの間質および血管内に多数観察され、そのパラフィン包埋切片材料から抽出した DNA を用いた PCR 法では、Leucocytozoon caulleryi のメロゾイトに特異的なミトコンドリア DNA 配列が検出された。【診断】Leucocytozoon caulleryi のメガロシゾント形成による肉芽腫性胸腺炎【考察】鶏に病原性を示す Leucocytozoon には L.caulleryiL.sabrazesi などの5種類が存在するが、日本ではL.caulleryiのみが報告されている。PCR 法の結果、観察されたメガロシゾントは L.caulleryi と同定され、従来の報告と一致していた。L.caulleryi はヌカカから鶏に注入されたスポロソイトが血管内皮細胞に感染して1代目シゾントを形成後にメロゾイトを放出し、それらは血管内皮細胞に再感染して2代目シゾントを形成、2代目シゾントは成長の過程で血管内皮細胞を破壊して血中に入り、全身諸臓器組織に運ばれて塞栓を生じ、さらに成長しながらメガロシゾントに成熟すると考えられている。提出標本に所見されるほとんどのシゾントは大きさおよび形態特徴からメガロシゾントと思われ、それらの多くは破裂してメロゾイトの放出により偽好酸球やマクロファージ、異物巨細胞などの炎症反応を伴っていた。
8.

Adaptation of porcine epidemic diarrhea virus (PEDV) to Vero cells

Sato, T.1), Oroku, K.1), Nagao, A.1), Furuya, Y.1), Taira, O.1), Tsutsumi, N.1)
1) Nippon Institute for Biological Science
The 48th Annual Meeting of the American Association of Swine Veterinarians, Denver
Abstract: Since 1990s, the modified-live and/or killed porcine epidemic diarrhea virus (PEDV) vaccines have been commercially available in the countries of East Asia including China, Japan and South Korea. These vaccine strains correspond to genogroup 1 (classical genotype), such as CV777 and isolated using Vero cells in culture media supplemented with trypsin.
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