研究成果03

誌上発表

誌上発表2006年(平成18年)

3.

哺乳豚におけるコクシジウム症の感染要因

平健介
日本生物科学研究所
臨床獣医、 24 巻、 5号、16-21、2006
要旨: Isospora suis は哺乳豚に下痢を起こし、豚の発育を阻害する。そのため、本原虫感染症は諸外国の養豚業において経済的損害をもたらす疾患として注目されている。 I. suis が子豚に下痢を起こす主病原体の 1つとして認識されるようになったのは1970年代後半からで、問題視されるようになってから比較的新しい。日本の養豚業においては、 I. suis 感染が注目されることはこれまでまれであったが、近年、本原虫感染症の発生報告が増えるとともにその予防対策の必要性が認識されてきた。一方で、 I. suis の生態、特にその伝播経路や発症要因については未だ不明な点が多い。本稿では、これまでの報告を参考にして、 I. suis の生活環、感染豚の病態、伝播様式および発症要因について概説する 。

4.

Mapping of expressed sequence tag markers with a cDNA-amplified fragment length polymorphism method in Japanese quail ( Coturnix japonica )

Sasazaki, S.1), Hinenoya, T.1), Fujima, D.1), Kikuchi, S.1), Fujiwara, A.2)
and Mannen, H. 1)

1) Kobe University
2) Nippon Institute for Biological Science

Animal Science Journal 77: 42ー46, 2006
ABSTRACT: In our previous study, a Kobe-NIBS Japanese quail (KNQ) linkage map was constructed mainly using amplified fragment length polymorphism (AFLP) markers. In order to compare chicken and quail chromosomes, we developed expressed sequence tag (EST) markers derived from cDNA-AFLP fragments and localized these markers on the linkage map. Using a total of 128 AFLP primer combinations, 24 polymorphic bands were obtained between a neurofilament-deficient mutant quail line male and a muscular disorder quail line female, which were the parents of the KNQ resource family. Nine of the 24 markers were mapped by linkage analysis. These markers were mapped to seven linkage groups, namely 1, 2, 3, 6, 8, 15 and 42. A subsequent homology search using chicken genome sequences strongly suggests that these linkage groups correspond with chicken chromosomes 1, 2, 3, 5, 15, 23 and 26.

5.

ワクチン効果に影響を及ぼす種々な要因(1)

土屋耕太郎
日本生物科学研究所
東獣ジャーナル、 475: 12-14. 2006.
要旨: ワクチンは、長い歴史の中でその有効性が不動のものとなった感染症への対抗手段である。ワクチン効果の基礎である防御免疫機構は、大きく非特異的応答抗原特異的な液性および細胞性免疫に分けられる。近年は非特異的応答と特異応答を橋渡しする自然免疫および特異免疫を増強するサイトカインの意義に関する知見が集積されてきている。また、粘膜は微生物の侵入門戸であり、ここには全身の免疫系とはある程度独立した粘膜免疫系が存在する。ワクチンは大きく生ワクチンと不活化ワクチンを代表とする非増殖型ワクチンに分類することができ、それぞれ優位な点、不利な点がある。生ワクチンは被接種動物の体内でワクチン株が増殖するので、野外株が感染したときと同じく有効性の高い液性および細胞性免疫の両者が誘導されるが、ワクチン株に残存しているかもしれない病原性の発揮や免疫抑制状態の誘導、病原性の復帰、持続感染、胎児への病原性、あるいは免疫抑制状態にある動物への病原性の発現等の可能性が否定できない点で不利である。不活化ワクチンを代表とする非増殖型ワクチンの優位な点および不利な点は生ワクチンのそれらと逆の関係になる。不活化ワクチンの最も優位な点は、増殖性因子(生ワクチン株)を含まないことによる安全性である。それぞれのワクチンの特徴を理解することはワクチンの選択に役立つ。個々のワクチン開発は、有意な点を維持発展させるとともに不利な点を克服するように開発の努力がなされている。

6.

ワクチン効果に影響を及ぼす種々な要因(2)

土屋耕太郎
日本生物科学研究所
東獣ジャーナル、 477: 10-11. 2006.
要旨: 新しい病原因子が見つかるたびに単味ワクチンが開発され利用できるようになる。すると、ワクチン接種が頻繁になるので、医療上および経済上の理由からワクチンの投与回数を減らす必要が出てくる。このような理由から混合ワクチンが開発されてきた。混合ワクチンは、単味ワクチンでの安全性と有効性が確認されたからといって単純に各成分を混合したワクチンではなく、混合する時点で成分の分量、安全性、有効性などを再度検討して開発される。複数の抗原成分を混合し、その数が増えると"抗原間の競合( Antigenic competition)"が起こり、それぞれの成分を単味ワクチンとして投与した場合に比べて免疫応答が低下する場合がある。一つの混合ワクチン内ではこの競合を回避するように慎重にデザインされている。ワクチン投与経路にはそれぞれの特徴があり、注意点がある。皮下注射、筋肉内注射はごく一般的に用いられている投与経路である。経口投与は鶏ではウイルス感染症のワクチン投与経路として良く用いられている。近年、鶏胚に対して鶏卵接種法が用いられ、大幅な省力化が図られている。

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